パリで感じた、世界が求める日本の技術
ヨーロッパ最大の生殖医療学会
『ESHRE2025』に出展

JOURNAL
#05

イントロダクション

2025年6月末、ヨーロッパ最大級の生殖医療学会『ESHRE2025』がフランス・パリにて開催されました。ヨーロッパを中心に世界中の医療従事者や研究者が集うこの国際学会にアステックも出展。新たな技術への関心、日本のものづくりに対する高い期待が寄せられました。

今回のジャーナルでは、展示された最新のタイムラプスインキュベーターをはじめ、現地での対話や反響、グローバル市場に向けたアステックの展望まで、人に寄り添う技術が国境を越えていく姿をお伝えします。

ヨーロッパ最大規模の 生殖医療学会へ

世界的な生殖医療学会として知られる『ESHRE』。アメリカの『ASRM』、アジアの『ASPIRE』、2年に1度の『ALPHA』と並び、生殖医療業界ではとくに注目される存在です。
2025年は6月29日~7月2日の4日間、フランス・パリのポルト・ド・ヴェルサイユで開催されました。

「アステックが『ESHRE』に出展し始めてから、今年で15年を迎えました。
「当初は、世界の市場で「ASTEC」の名を知る人はほとんどおらず、展示ブースでは『代理店を探しています』『代理店になっていただけませんか?』といった声掛けをしながら、販売ネットワークの構築に奔走していました。それから年月を重ね、現在ではブランド力と製品品質の両面で世界から高い評価をいただくようになり、展示会の場では『こんな製品をASTECに作ってもらえないか?』『自社の技術をASTECに提供し、コラボレーションできないか?』といったご相談を受ける機会も増えてきました。
当初は“売るために探していた展示会”が、いまでは“世界とつながり、新たな価値を共創する場”へと変化していることを実感しています」と長常務は話します。

直接体験により ポジティブな評価を獲得

アステックでは、2010年以降、コロナ禍を除いてほぼ毎年『ESHRE』に参加しています。近年は、スペイン・バレンシアに本部を置く世界的な大手クリニックを中心に、ヨーロッパ市場は活発化しており、先進性や成長性が際立っています。単体で見ると経済大国アメリカを上回るほどではありませんが、ビッグプレイヤーが拠点を置くヨーロッパは、グローバル市場の中でも注力すべき市場です。

そのヨーロッパを舞台に、アクセスの良い主要都市で開催されるのも『ESHRE』の特長です。今年も約18,000人が業界最前線の技術や知見を求めて来場しました。
来場者の注目を集めたのは、新型タイムラプスインキュベーターCCM-CHRONOSでした。アジアの『ASPIRE』に続き、ヨーロッパでは初の展示。ひと際多くの関心が寄せられ、ブースでは熱心な質問や対話が絶えず、高い反響を集めることができました。

新型タイムラプスインキュベーターCCM-CHRONOSの特長である高精細な画像品質を実感できる絶好の機会となった今回、“百聞は一見に如かず”とばかりに、実機に触れる直接体験から人々の驚きや関心を引き出すことができました。「社のフラッグシップモデルに、ポジティブなフィードバックを集めることができ、嬉しく思います」と成田主任は胸を張ります。

インドで新規展開を狙う富裕層向けIVFクリニックをはじめ、ドバイやサウジアラビア、レバノン、オーストラリアのクライアントから強い関心が寄せられ、具体的な引き合いが生まれています。
加えて、胚評価にAIを活用するLife Whisperer事業を取り込み、既存のアステックAI技術と融合したことで、多角的な判断を可能にしたシステムの構築や液体窒素保存容器などのラインナップ拡充もアピール。包括的なソリューションを提供できる強みを訴求できました。

Face to Faceの対話から生まれる信頼

展示会はアステックの技術を紹介するだけの場ではありません。世界各国の代理店やクライアントと“顔を合わせて、言葉を交わす”ことのできる重要な機会でもあります。ヨーロッパ各国には複数の代理店が存在し、それぞれのニーズや市場環境を共有し合う場として、アステックとの信頼構築にも大きく寄与しています。

展示会での対話の様子

展示会には、世界から様々な地域のアステックスタッフも来場。新型タイムラプスインキュベーターCCM-CHRONOSの詳細や特徴を丁寧に伝えることができ、代理店の理解を深め、連携力のさらなる強化につなげました。

CCM-CHRONOSの説明風景

日本からは、2024年に入社した海外事業部の阿部さん(ヨーロッパ・インド担当)、ヒュームさん(アメリカ・中東担当)も参加。これまでメールでのやり取りだけだった代理店と直接対話を交わすことで一気に距離が縮まり、それぞれが抱える課題や要望を深く理解することもできたそうです。

海外代理店との情報共有

期間中、さまざまな情報を交換できたことで、スペインで開催されるローカルな展示会や12月に中東で予定されている『MEFS』への出展準備を決めるなど、4日間にわたる交流は、次のアクションプランを具体化する大きな一歩になりました。

その声が、次のグローバル展開に不可欠な視点

「国際認証を取得し、世界で戦う準備ができた今、グローバル市場において、その後のアフターサービスや運用サポートまでを含めた長期的な信頼構築を重視するフェーズに入っています。とくに新型タイムラプスインキュベーターCCM-CHRONOSの本格展開に向け、製品性能だけでなく販売後の安定したサポート体制をどう築くかが重要なテーマ。国内では営業・技術スタッフによる迅速な対応が可能ですが、海外では各国の代理店を通じて情報を集め、より柔軟で高品質なサポート体制を構築していく必要があります」と成田主任。

製品のグローバル展開をさらに加速させるためにも、現地ニーズに即した仕組みづくりが不可欠だと話します。

9月末には、アメリカや中東の責任者や外部コンサルタントを本社に迎え、新型タイムラプスインキュベーターCCM-CHRONOSの勉強会を実施予定。先の展示会で決定したインドやオーストラリアの納品現場で得るリアルなフィードバックを、他国の代理店に共有していく方針です。

単なる技術提供にとどまらず、誠実な対話と信頼をベースに、世界の医療現場に“安心”と“人に寄り添う技術”を届けるアステック。難易度が高いMDRの認証を経て、世界の生殖医療業界に新たな旋風を巻き起こす準備を着々と進めています。

海外売上の約4分の1を占めるアメリカに続き、ヨーロッパでのシェアを広げるアステックでは、マサチューセッツ、ソウル、上海の拠点や各国の代理店と連携しながら、世界との距離を縮めています。

変化の速いグローバル市場において、アステックが大切にしているのは、“信頼”を築く丁寧な姿勢。誠実な対話の積み重ねが、未来への道を切り拓いています。

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