誠実が、未来をひらく。
アメリカで挑むアステック

JOURNAL
#04

イントロダクション

アステックは、日本発のインキュベーターブランドとして、世界の研究現場で信頼されることを目指してきました。 近年、その技術力と品質は、アメリカでも着実に評価を高めています。
今回ご紹介するのは、アステック・バイオ・USAで現地チームを率いる責任者、ドンさん。
2012年にアステックがアメリカに進出して以来、研究機器専門のエンジニアとして機器のメンテナンスを引き受け、2017年にアステックの現地法人設立を機に、正式にチームの中核を担うようになりました。

医療やライフサイエンスの現場を熟知するドンさんは、日本の技術を、アメリカの研究・医療の現場へと届け続けています。
販売・サポート、そしてチームづくりに至るまで——
現場の最前線に立ち続けてきたその歩みに、現地の声とともに迫ります。

25年の歩みが 導いた確信

アステック・バイオ・USA(ASTEC BIO USA, Inc.)が拠点を構えるのは、アメリカ北東部・マサチューセッツ州ボストン近郊。
研究機関や医療機関が集まり、ライフサイエンス分野でも注目される地域の一つです。落ち着いた街の空気と高い専門性が交わるこの環境は、アステックの製品を支える現地拠点としても、自然と馴染んでいるといいます。

そんな拠点でチームを率いているのが、今回の主役・ドン ルオンゴさんです。 北米および中南米を対象に、医療やライフサイエンス分野の製品とサービスを展開するアステック バイオUSAを支える責任者。現在は、事務スタッフ2名・技術スタッフ3名とともに、6名体制で現場を担っています。
ドンさんは、もともとニューイングランド地域でバイオメディカル製品分野のフィールドサービスに従事していました。 Olympus Americaの顕微鏡や、Kinetic Systemsの防振台、Thermoグループ各社の機器など、数多くのメーカーの製品に携わってきたベテランです。そうした製品群の中には、インキュベーターも含まれていました。


小さな拠点から、 北米・南米へ伝播する

アステック バイオUSAでのドンさんの主な役割は、社内チームのマネジメントに加え、北米から中南米まで広がる約16社の独立系販売代理店の統括です。 さらに、プラスチック製品やマイクロピペットの取り扱いも始まり、ボストンに設けた倉庫から即日発送ができる体制を整えるなど、現場のニーズに応えるための施策を次々と実行しています。

「お客様が、いつでも私たちに直接連絡できると感じてもらうこと。それがまず大切なんです」 そう語るドンさんは、単に販売を拡大するだけでなく、サービス体制そのものを“信頼の仕組み”として育ててきました。 「現場でのサービスが私は好きです。でも今は営業や管理の役割が増えてきました。だからこそ、チーム全員が顔の見える関係でお客様とつながっていけるようにしたいんです」

これからはチーム全体で顧客との関係を深め、米国内での直販体制をさらに広げていく構想も持っています。 その中でも、ドンさんが大切にしているのは「職場の空気」です。 「日々の業務では集中力も求められますが、職場ではできるだけカジュアルに、心地よく過ごせる雰囲気を大切にしています。長く一緒に働くからこそ、居心地の良さはとても大事なんです」 アステックの製品が実際に使われている現場に出会うとき、ドンさんの目は特に輝きます。

「展示会で、“使ってますよ”と声をかけられると、本当にうれしいですね。東京から来た研究者の方が、アステック製品について熱く語ってくれたときは、もう胸がいっぱいになりました」

誇りを持ってつくられた製品が、必要とする人のもとに届いている――。 その瞬間を分かち合える喜びが、チーム全体の情熱へとつながっていきます。

技術に、誠実を重ねて

「展示会や現場でアステックの製品を見た方、実際に使っている方からは、よく“品質がいい”とか“安定しているね”という言葉をいただきます」 そう話すドンさんが重視しているのは、設計の正確性と、安定した性能です。

特に受精卵の発育を支える現場では、こうした精度と安定性が求められるのは言うまでもありません。

「たとえば内部センサーが異常をすばやく察知できるのは、エンジニアにとってありがたいことなんです。もちろんユーザーにとっては、アラームが煩わしく感じられることもあります。でも、“何も起きていない”という状態こそ、設計が正しく働いている証なんです」 アステックのセンサーは耐久性にも定評があり、10年使われた例もあります。
ランニングコストの低さが、信頼の積み重ねにつながっています。 この数年でブランドの認知度も高まってきましたが、それは突発的な出来事ではなく、「品質」と「誠実さ」の積み重ねだと、ドンさんは振り返ります。
「競合メーカーが展示会でうちの製品の写真を撮っているのを見たときは、“注目されてるんだな”と実感しましたね」と笑います。

その声が、次のアステックをつくる

製品開発にも、顧客の声が確実に反映されています。SS-250はIVFの現場で広く採用され、いまでは“基準機”としての位置を確立しています。
インキュベーターにアナログ出力を標準搭載したことや、様々な培養ディッシュを固定できるユニバーサルプレートの設計も、現場からの要望を反映した結果です。

「カスタム対応ができるのも、アステックの特長ですね。特注のカートやヒーター配置、パススルー設計なども手がけてきました。R&D部門(研究開発のチーム)や特別生産の現場に立ち会う機会は、やはり印象に残ります。Chronosの開発に少し関わったときも、完成が本当に楽しみでした」

次の製品がどのような姿になるのか、すべてを予想することはできません。
けれど、「確かなもの」を届ける姿勢だけは、これからも揺るぎません。
アステック バイオUSAは、日本の現場と世界のニーズをつなぐ拠点として、その準備と対話をこれからも重ねていくでしょう。

アステックの“現場”は、日本にとどまりません。 海外の小さな拠点であっても、そこに暮らし、働き、届けている人がいます。
それぞれの地域で、どんな想いと挑戦があるのか――

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次回は別のフィールドから、アステックの“今”をお伝えします。

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