
世界から選ばれる
その理由とは
アステックのものづくり
JOURNAL
#03
SCROLL
イントロダクション
「世界一のインキュベーターブランドへ」を目指し、世界の医療と科学の未来への貢献を続けるアステックのものづくり。近年、グローバル市場でシェアを拡大し続けるアステックの強さを探ろうと開発の最前線を取材した前編に続き、後編では、事業を裏方から支える品質管理課の仕事に密着します。
新しい技術や発想を取り入れながら開発に挑むメンバーのものづくりを、ときには力強く後押しし、ときには世界から認められる製品であるための指南役となり、世界に誇れる医療機器であることを証明してきた品質管理課の苅田係長に話をうかがいました。

約10年勤めた大手医療機器メーカーで、工場の新規立ち上げや規制対応などを経験。そこで得た知見やノウハウを生かし、自身のキャリアを磨きたいと考えていた苅田係長がアステックを選んだのは、医療機器メーカーとして世界進出をめざす成長勢いに惹かれたから。
すべてのレギュレーションにおけるキーマンでもある苅田係長に、これまでの軌跡を尋ねました。
理化学研究機器メーカーから、医療機器メーカーへ
「一般的に品質管理といえば、工場内で製造品質を管理する仕事を思い浮かべる人も多いと思います。当社でその役割を果たすのは、生産部に紐づく品質管理係。私たち品質管理課では何をしているかといえば、医療機器メーカーでいうところの品質保証に関する業務を担っています」と苅田係長。
アステックの品質管理課の大きな特長は、開発から製造までのすべての部門と連携し、レギュレーションを一元管理していること。縦割りの組織とは異なり、医療機器の品質保証に関する知見や管理ノウハウが一カ所に蓄積される利点があり、メーカーの生命線でもあるレギュレーションに精通できているといいます。
約15年前、苅田係長が入社した当時は、理化学研究機器メーカーから医療機器メーカーへの移行期でもあり、現場サイドで醸成されてきた意識や風土を変えていくことに非常に苦労したそうです。そこで、社内変革を円滑に進めるため、医療機器に関するすべてのレギュレーションを品質管理課で一元管理することにし、各部署と対話を重ねながら社内規定のベースを築いてきました。
苅田係長の傍らにある六法全書のような分厚いファイルには、すべての手順が事細かく記されています。


レギュレーションの実践的な運用管理を実現
まずは、開発、製造、品質管理の業務ごとに手順を定めるなど、医療機器の運用に関する社内規定を作成するところからスタートしました。
「最初は、医療機器の手順に基づいていくため、各部署との調整に苦労しました。
規制側のプロとして現場の声を聞き、お互いの規制を適合させることで、アステックならではのこだわりや業務の流れまで、上手くミックスしながら仕上げることができたと自負しています」と苅田係長。


品質管理課で一元管理することで、現実的な運用かつ規制を満たせていることも、アステックの医療機器対応の大きな強みとなっています。
毎年のISO13485やQMS(品質マネジメントシステム)の監査でも、初年度以外、認証に関して指摘を受けたことは一度もありません。規制に寄りすぎて机上の空論となり、二重スタンダードが生まれ、審査で厳しい指摘を受ける企業もあるなか、現実的な運用により規制に対応していることで、スムーズな監査につなげられています。
「医療機器を扱っているという高い意識が各部署に浸透しており、医療機器メーカーを中心に監査している方から、『高いレベルで運用管理されていますね』と評価いただきました」。
規制で適切に管理するよう記されていても、何が適切なのかは企業側に解釈が求められることが多く、正解が見えない部分もあるため、監査を終える度に「この解釈で正解だった」と答え合わせができた気持ちになると苅田係長は話します。
MDRの早期取得で、品質水準の高さを示す

アステックでは、欧州や米国での流通を前提としたものづくりを進めています。2022年に発布された欧州の新しい規制となる認証についても、世界の医療機器メーカーに先駆けて取得することができました。
2024年5月がMDRの認証期限でしたが、期限内に移行できたのは全体の約3割。現状を受け、欧州議会では移行期間の大幅な延長を承認しています。
競合他社の多くが移行できずにいるなか、世界一厳しいとささやかれるMDRでスピード感を持ち認証まで漕ぎつけることができたのは、社内でも大きな自信につながったそうです。
「審査に通るまで、2~3年。1回に約100件の指摘を受けることもあり、一つひとつクリアしていくのは大変な作業でしたが、取得できたときには、とにかくほっとしましたね」と苅田係長は当時を振り返ります。
欧州や米国の厳格な審査が必要な認証を取得できていることで、ほとんどの国と地域に製品を流通することができます。一方、規制や基準は常に更新されるため、迅速に対応する体制づくりも重要です。
「インキュベーターやバイオ装置はもちろん、 IVF専用ディッシュなどの製品にも生物学的安全性が問われるなど、原材料や製造工程における安全性を証明する必要があります。滅菌製品の無菌性やシステム関連におけるサイバーセキュリティ分野の規制、AI規制など、次々と加えられる規制を確実にクリアしていくことが私たちのミッションです」。

品質管理課のメンバーが大切にしているのは、アステックの根幹にある「お客様の声を大事にしたい」という想い。「お客様に安心をお届けする」という会社の理念を社員一人ひとりが真摯に受け止め、スピード感をもって顧客最優先の対応力を発揮できる職場環境があるからこそ、信頼の代名詞でもあるアステック品質を守ることができているのです。
毎年の監査をスムーズに進めるほか、これまで以上にさまざまな要求事項が厳格化されたMDRを、世界各国の医療機器メーカーに先駆けて取得するなど、レギュレーション対応に定評のあるアステック。 その運用を一元管理する品質管理課の苅田係長がめざすのは、一人ひとりのメンバーがプロフェッショナルとして成長し、より強固な体制を構築することです。医療機器メーカーとして成熟したレギュレーションを蓄積するアステックのさらなる飛躍から目が離せません。
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次回は海外現地責任者から世界に広がるアステックについてお伝えします。