
世界から選ばれる
その理由とは
アステックのものづくり
JOURNAL
#02
SCROLL
イントロダクション
“医療機器であること”が前提となるアステックのものづくりは、開発と品質保証の両輪により成り立っています。自由な発想や最先端技術を用いて開発を進めても、医療機器として製品を世に送り出すことができなければ、アステックがめざす『医療機器メーカーへのトランスフォーメーション』は実現しません。
今回のジャーナルでは、前編・後編の2部構成で開発課と品質管理課に密着し、顧客ニーズを最大限に捉えた製品開発へのこだわり、幾つもの厳しい基準をクリアして実現する製品リリースへの取り組みに焦点を当て、グローバル市場で躍進し続けるアステックの強みに迫ります。
まずは、ものづくりの起点となる、開発課から――。

アステックのものづくりにおいて、すべての出発点となる開発課。製品が生まれる源流でもあるだけに、企業の存在価値や収益を高めるためにも重要な戦略部門だといえます。
開発課では、社内で生き字引ともいわれる勤続40年の熟練者から伸び盛りの若手社員まで、幅広い世代の11名がそれぞれ担当するプロジェクトに従事。既存製品のリニューアルから新製品の開発まで手掛けています。
顧客ニーズからはじまるものづくり
アステックのものづくりは、顧客ニーズからはじまることが圧倒的に多いと話すのは、開発課の井上課長。とはいえ、「あったらいいな」を実現するのは容易いことではなく、どうすればできるかの方法を考え、試作を重ね、トライ&エラーを繰り返し、目的の達成に近づいていきます。
「難しいテーマになるほど失敗も増えますが、新しい技術を試みる、メーカーとの共同開発に挑戦する、過去実績のない製品に携われるなど、開発意欲を全面的に応援してもらえる環境があります」と井上課長は話します。


リリース前から話題を集める新型タイムラプスインキュベーターCCM-CHRONOSの例を見ても、その企業風土が伝わってきます。インキュベーターといえば、シンプルで平らな形状が主流でしたが、近年は画像解析やAI活用が進み、仕様も大きく変化しています。
「開発では、高名な胚培養士の先生方にメディカルアドバイザーとして知見をいただくなど、リアルな声をアグレッシブに集めることで、医療現場で求められる性能を追求しています。特にAI環境では、受精卵の判断基準へのアドバイスをいただきました」。


こだわったのは、画質の向上。光学分野に強いメーカーとタッグを組み、困難を乗り越えてハード環境を整え、ソフト面でも画像処理の精度を高めるために何度も胚培養士のもとを訪ね、ようやく製品を完成することができました。2025年1月と4月にプレリリースの展示会を開催したところ、想像以上に高い評価を獲得。「画像がとてもきれい!」と驚きの声があがるなど、手応えをつかんでいます。
「Nikonとの共同開発でモジュールコントラストと呼ばれる特殊な顕微システムを採用できたことにより、受精卵の形状や細かな凹凸など、より正確な判定ができるようになりました。フラッグシップモデルでもある新型タイムラプスインキュベーターCCM-CHRONOSで高い評価を得たことは、メーカーとしての大きな自信となります」と井上課長。8月の本格リリースに向けて最終調整のフェーズへと進んでいます。
細部へのこだわりが信頼に直結

アステックの主力製品として不妊治療クリニックで使用されるインキュベーターは、人の命の誕生に関わる、非常に繊細で重要な部分を担う製品です。先進国全体で少子高齢化が進む傾向にあるなか、子どもがほしいと願う人々のニーズは増えており、その切実な願いを最大限サポートできる製品づくりに携われていることにやりがいを感じていると井上課長。
「胚培養士や医師の先生方とのやり取りを通じて、不妊治療は一度で成功するものではなく、やっとの思いで成功するユーザーも多いと知りました。製品に問題があれば、千載一遇のチャンスがふいになってしまう可能性もあるため、いかに不具合が起きないようにするか、そのケースをどれだけ減らせるかに使命感を持ち、開発に取り組んでいます」。
国内外でのシェアが拡大し、海外製品との比較やアステックの製品が選ばれた理由が続々と届くようになった今、あらためて精度の良さや安定性の高さが、そのままブランドへの信頼に直結していることがうかがえます。
「ヒーターの配線一つ、風の流れ一つでも温度分布に影響が出るため、設計段階から精度にこだわり、試作段階でも微調整を重ねています。社内では当たり前のこだわりが、海外で高く評価されていることを自覚する機会も多いですね」。
情報技術を応用し、分野をリードする存在へ

世界各国に製品を届けるためには、品質保証を担う品質管理課との密なコミュニケーションが欠かせません。しかしながら、“攻め”の姿勢が求められる開発と“守り”の姿勢が重要な品質管理では、リスクを懸念する観点から意見が相対することもあります。

「国際的な認証を得るために、品質管理課から設計や規格に関するアドバイスを受けることもありますが、新しい機械を生み出すには、これまでとは異なるアプローチが重要になることもあります。互いの役割を全うする意味で、ときには熱く議論を交わすこともありますが、アステックという一つのメーカーとしての思いは同じですし、基本的には協力関係にあります。認証を受けなくては医療機器としてリリースできないため、両軸でものづくりを進めています」。
AIやIoT、クラウドなど情報技術の発展とともに、アステックでも新しい製品やシステムを提案できるよう開発領域もさらに広がっています。 「開発を進めることで、不妊治療の成功率を高める新しい製品システムを提案したいですし、業界全体をリードする医療機器メーカーとしてのポジションを確立していきたいと考えています」と井上課長。開発メンバーのフロンティア精神は尽きることがありません。
ものづくりの最前線に立つ開発チームでは、新型タイムラプスインキュベーターCCM-CHRONOSの本格リリースを目前に、 “新しい価値を世に送り出すやりがい”を実感する日々を過ごしているといいます。 世界のトップメーカーや大学と共同開発を進めるなど、広く知見やノウハウを吸収し、最先端の情報や技術をアップデートしながら、信頼を獲得する性能にこだわる技術者の思いに触れることができました。
NEXT
<後編>では、その開発メンバーを力強くバックアップする『品質管理課』の仕事に密着します。